採用ブランディングの打ち手をどう選ぶか|「採用数」×「離職率」の4タイプ

最初の一歩は「自社の現状をどう見立てるか」です。

TECH PLAYでは『採用数』×『離職率』の2軸で整理する方法を推奨しています。

たとえば、下記のように整理していきます。

【A】採用数が多く、離職率が少ない会社 = カルチャー明文化&ブランド投資型
すでに人材が定着している強みを活かし、自社のカルチャーや価値観を積極的に発信するフェーズ。オウンドメディアやカンファレンスで「この会社で働く意味」を発信すれば、候補者の共感を得やすくなります。
採用担当者がまず取り組むこと:自社がなぜエンジニアから選ばれているのかを社員・候補者へのインタビューから整理し、採用メッセージとして言語化する。

【B】採用数が多く、離職率も高い会社 = 組織制度整備&リブランディング
まずは制度や仕組みを整える段階です。教育制度や評価制度を見直し、ブランドの基盤を固めることが先決になります。

【C】採用数も離職率も少ない会社 = 周囲のファンをつくる
いきなり大きな投資をするよりも「ファンづくり」から着手しましょう。社員インタビューや自社HPの改善を通じて、小さくても熱量のある共感層を育てることが重要です。
採用担当者がまず取り組むこと:応募獲得より先に、技術記事やイベントなどを通じて転職潜在層との接点を増やす。

【D】採用数が少なく、離職率が高い会社 = カルチャー見直し&エンゲージメント強化
発信の前に「カルチャーの見直し」が欠かせません。役員や社員との対話を重ね、エンゲージメントを高める活動と並行して情報発信を進める必要があります。

あなたの会社はどのタイプに近いでしょうか?この整理だけで、今取り組むべき打ち手がクリアになります。

情報設計は「やりたい施策」ではなく「採用課題」から始める

「技術ブログをやる」「イベントをやる」「採用サイトを刷新する」から考えるのではなく、

採用課題 → 変えたい候補者の認識 → 伝える情報 → チャネル

の順番で施策や設計を決めましょう。

コンテンツ設計|“抽象から具体”へ流れるストーリー設計と伝達手法

情報発信で迷いやすいのが「どんな内容から伝えるか」と「どの手法で届けるか」です。

候補者の理解には流れがあります。

まずは理念やビジョンなどに触れ、次に技術やプロジェクトを知り、最後に事例や調査で確信を深める——この順番を意識するとストーリーが自然に流れます。

STEP1:価値観やビジョン
DXビジョンや中期経営計画など、会社がどこを目指しているのかを示すメッセージ。

STEP2:技術やプロジェクト
クラウドやAIといった技術テーマ、新規プロジェクトや組織づくり、社員やリーダー紹介など。エンジニアにとっての「挑戦できる環境」を伝えます。

STEP3:事例や調査
社員取材記事、技術ブログ、SNS発信、勉強会レポートなど。具体的な実践や数字が候補者の納得感を高めます。

もしこちらの記事をご覧になっている方が採用人事担当者なら以下のようなフレームワークで考えるとより具体的に施策に結びつけられるかもしれません。

コンテンツ設計のフレームワーク。WHY=なぜこの事業・技術に取り組むのか(経営戦略、DX戦略、技術戦略)、WHAT=どんな技術・プロジェクトなのか(開発事例、技術記事、プロジェクト紹介)、WHO/HOW=誰と、どう働くのか(社員インタビュー、イベント、動画)、ME=自分が入社すると何をするのか(求人、キャリア、評価制度、選考情報)

このフレームワークは、現在弊社のブランディングサービスでも活用されています。候補者が知りたい情報をWHY→WHAT→WHO/HOW→MEの順で整理しています。記事側もこの考え方と接続させると、法人サイト全体のメッセージに一貫性が出ます。

詳しくはこちら:TECH PLAYのブランディングコンサルティング

同じ情報でも、候補者の認知段階によって適したチャネルは変わります。ここからは、それぞれのチャネルを「採用活動のどこで使うか」という視点で整理します。

発信手法の選び方|オウンドメディア・技術ブログ・イベント・SNS

情報発信とひと口にいっても、手法ごとに「目的」「活動目安」「必要コスト」は大きく違います。ここを理解していないと「やってみたけど続かない」「効果が見えない」という落とし穴にはまりがちです。

TECH PLAYでは大きく4つの手法に整理しています。

オウンドメディア|認知度と企業理解を深める“母艦”

目的
事業・組織・技術などを体系的に集約し、直接的な応募数よりも認知度向上や企業理解の深化に寄与する。

こんな企業にオススメ
採用を継続的に行う企業、編集スキルを持つメンバーがいる企業、安定してコンテンツを生み出せる現場を持つ企業

長期的に採用力を高めたい会社にとっては「投資に見合う母艦」となるのがオウンドメディアです。

技術ブログ|現場エンジニアの声を外に届ける場

目的
技術情報を社外に開示し、エンジニアのプレゼンスを高める。社員の育成や社内コミュニケーションにも好影響。

こんな企業にオススメ
技術発信に寛容なカルチャーを持ち、現場に「発信したい」社員がいる企業。経営・技術TOPの理解と協力が必須。

技術ブログは「会社の技術的立ち位置」を示す鏡。候補者に「ここで働けば成長できる」と思わせる効果が大きい手法です。

イベント|直接接点を生み“熱量”を共有する場

目的
候補者との直接的な接点を創出し、技術やカルチャーをリアルに伝える。勉強会(情報共有型)とMeetup(採用目的型)の2タイプがある。

こんな企業にオススメ
採用効果を早期に出したい企業、リスト獲得や接点形成を重視する企業、現場協力と予算が確保できる企業

成果が見えやすく、社外との距離を一気に縮められるのがイベント。特に採用直結を狙うフェーズで有効です。

【TECH PLAY支援事例】「採用サイトに来ない人」にはイベントで接点をつくる

TECH PLAYは自動車業界に強みを持っています。ここでは、トヨタ自動車様の支援事例をご紹介します。

トヨタの課題は、ソフトウェア人材から「トヨタでソフトウェア開発をする」という認知を十分に得られていなかったことでした。採用色を前面に出すのではなく、技術をテーマにTECH PLAYイベントを実施し、「トヨタに興味がないエンジニア」との接点形成を狙っています。イベントは10回以上開催され、累計7,000名超の申込があり、そこから100名超が採用選考へ応募しています。

事例記事はこちら:トヨタ自動車株式会社の支援事例

SNS|日常の延長で“親近感”を育てる

目的
スピードと拡散力を活かし、候補者に親近感を持ってもらう。若年層やtoCサービスに強い。

こんな企業にオススメ
スピード感のある広報を目指したい企業、SNS発信を通じて候補者との接点を増やしたい企業

SNSは“会社の日常”を届ける場。候補者に「リアルな会社像」を想像させやすく、オウンドメディアやイベントと組み合わせると効果が高まります。

自社のリソース・目的・ターゲットを踏まえて、まずは「最小限でも継続できるもの」から始めるのが鉄則です。

やみくもに全部やろうとせず、優先順位をつけて取り組むことが、採用ブランディング成功の第一歩になります。

人事の方向けのチャネル整理

人事向けのチャネル整理表。技術記事・ブログ=技術力が伝わらない課題に有効、主な候補者は潜在~興味層、KPI例は閲覧・再訪・求人遷移。イベント=会社を知られていない課題に有効、潜在層、KPI例は申込・認知変化・継続接点。動画=人・文化が伝わらない課題に有効、興味~選考層、KPI例は視聴・選考中の利用。SNS=継続接触できていない課題に有効、潜在~興味層、KPI例は接触・サイト遷移。採用サイト=応募判断材料が不足の課題に有効、興味~顕在層、KPI例は求人閲覧・面談・応募

採用サイトは“発信のハブ”になる|候補者が次に知りたい情報へつなぐ

エンジニア採用では、候補者が最初から採用サイトを訪れるとは限りません。

技術ブログの記事を読む、SNSで社員の投稿を見る、技術イベントに参加する、YouTubeで登壇動画を見るなど、企業を知るきっかけはさまざまです。

そのため採用サイトには、それぞれのチャネルで生まれた興味を「その場限り」で終わらせず、候補者が次に知りたい情報へ進める“ハブ”としての役割があります。

例えば、技術イベントで初めて自社を知ったエンジニアがいたとします。

イベントで扱われた技術テーマに興味を持った候補者は、その後、

技術イベント

関連するプロジェクト・技術記事

登壇したエンジニアやチームの紹介

開発組織・働き方・キャリアについての情報

募集ポジション

カジュアル面談・応募

と、少しずつ企業への理解を深めていきます。

この流れの途中で「次に見るべき情報」が見つからなければ、せっかく興味を持ってもらっても候補者は離脱してしまいます。

採用サイトに求められるのは、すべてのコンテンツを自社サイト内で制作することではありません。

技術ブログ、イベントレポート、動画、SNS、外部メディアの記事なども含めて、候補者が企業について知りたい情報を整理し、次の情報へつなげることが重要です。

採用サイトで整理しておきたい4つの情報

候補者が企業への理解を深め、最終的に応募を判断できるようにするためには、少なくとも次の4つの情報をつなげておく必要があります。

1.なぜこの事業・技術に取り組んでいるのか
企業のビジョンや事業戦略、技術戦略などを通じて、「この会社が何を目指しているのか」を伝えます。特にエンジニア採用では、単に「DXを推進しています」「AIを活用しています」と伝えるだけでは十分ではありません。なぜその領域に投資しているのか、事業の中で技術がどのような役割を担っているのかまで伝えることで、候補者が自社で働く意味を理解しやすくなります。

2.どんな技術・プロジェクトに携われるのか
プロダクトやプロジェクトの内容、技術スタック、開発上の課題などを紹介します。技術ブログやイベントで発信した内容がある場合は、採用サイトから関連コンテンツへアクセスできるようにしておくことで、候補者はより具体的に仕事内容を理解できます。

3.誰と、どのように働くのか
社員インタビュー、開発チームの紹介、開発プロセス、働き方、評価制度、キャリアなどを通じて、入社後の働く姿を伝えます。エンジニアにとっては仕事内容だけでなく、「どんなエンジニアと働くのか」「技術選定にどの程度関われるのか」「どんなキャリアを描けるのか」も重要な判断材料です。

4.自分が応募すると、どんな仕事をするのか
最後に、募集ポジション、具体的な業務内容、求める経験、選考プロセスなどを明確にします。事業や技術への興味が高まっても、「自分がどのポジションで何をするのか」が分からなければ応募にはつながりません。求人情報だけを独立させるのではなく、それまで候補者が見てきた事業・技術・社員の情報とつながるように設計することが重要です。

「情報がある」だけではなく、「情報がつながっている」状態をつくる

採用サイトを改善するとき、「社員インタビューがある」「技術紹介ページがある」「求人情報がある」といったコンテンツの有無だけを確認してしまいがちです。

しかし、重要なのはコンテンツの数ではありません。

  • 社員インタビューを読んだ候補者が、その社員が所属するプロジェクトについて知ることができるか
  • 技術記事を読んだ候補者が、その技術を使う募集ポジションを確認できるか
  • イベントを見た候補者が、登壇した社員や開発組織についてさらに深く知ることができるか

このように、一つのコンテンツから次の情報へ自然に移動できる状態をつくることが、採用サイトにおける情報設計です。

採用サイトは単なる「求人情報を掲載する場所」ではありません。

外部を含むさまざまなチャネルで生まれた候補者の興味を受け止め、企業理解を深め、最終的な応募・カジュアル面談といった行動までつなげる場所です。

採用サイトで押さえたい5つの情報設計

採用サイトを構築・運用する際は、候補者が「ここで働きたい」と思える仕掛けを盛り込むことが大切です。

特に以下の5項目は、成功している企業サイトに共通しています。

①ターゲット別に情報を整理する
エンジニア向けに特化したページを設けることもTECH PLAYではおすすめしています。シンプルなメニュー構造とレスポンシブ対応で、候補者が迷わず情報にアクセスできます。

②自社ならではのWHY・WHATを伝える
MVV(ミッション・バリュー・ビジョン)や企業ストーリーを明示し、写真や動画でカルチャーを伝えることで候補者は「入社後の自分」を想像しやすくなります。

③仕事とキャリアを具体化する
職務内容・待遇・勤務地・キャリアパスを明示。認定・受賞歴、主要取引先を明記すると「安心して応募できる会社」として認知されます。

④社員・技術・プロジェクトでリアルを見せる
社員インタビュー、オフィス紹介、最新プロジェクト記事などでリアルな働く姿を伝えます。

⑤次の行動につなげ、改善する
エージェント依存を減らし、簡易応募フォームやカジュアル面談の導線を整えることで応募率を高めます。Webマーケティングの一環として捉え、アクセス解析や候補者アンケートを活用し、サイト改善のPDCAを回しましょう。

TECH PLAY支援事例|複数の発信チャネルをつなぎ、候補者との接点を広げたCTC

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の金融事業グループでは、社内に高い技術力やさまざまな取り組みがある一方で、それらが社外のエンジニアに十分伝わっていないことが課題となっていました。

そこで、技術情報を単発で発信するのではなく、複数のチャネルを組み合わせて継続的に情報を届ける仕組みを整えています。

その中心となっているのが、オウンドメディア「CTConnect」です。社員のキャリアストーリーや職種紹介、技術イベントの資料などを蓄積しながら、テックブログやSNS、TECH PLAYの企業ページ、技術イベントなどとも連動。候補者が一つのコンテンツをきっかけに企業を知り、さらに別の情報へアクセスできる状態をつくっています。

また、イベントについても、当初は登壇者ごとに発信テーマがばらつくという課題がありました。そこで、「社内で話したいテーマ」だけではなく、「社外のエンジニアがどのようなテーマに興味を持つか」という視点を取り入れ、企画を改善しています。

こうした取り組みを継続した結果、TECH PLAYを活用したイベントの集客規模は、当初の約140名から250名規模へと拡大し、直近では600名規模の申し込みにつながるケースも生まれています。

まさに弊社がお伝えしている「情報を点ではなく面にする」を実践していただいている事例です。

事例記事はこちら:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の支援事例

この事例から分かるのは、採用ブランディングでは「どのチャネルを使うか」だけでなく、それぞれのチャネルをどうつなぎ、候補者が次の情報へ進める状態をつくるかが重要だということです。

オウンドメディア、技術ブログ、イベント、SNSなどを別々の施策として運用するのではなく、それぞれに役割を持たせ、情報が相互につながるように設計することで、候補者の企業理解を段階的に深めることができます。

まとめ

第3章では「情報設計」をテーマに、採用ブランディングを成功させるための基本を整理しました。

  • 採用課題を最初に特定する
  • WHY→WHAT→WHO/HOW→MEで情報を整理する
  • 候補者フェーズと採用課題でチャネルを選ぶ
  • コンテンツ同士をつなぐハブをつくる
  • 候補者の反応を計測し改善する

自社が現在運用している採用サイト、技術ブログ、記事、動画、イベント、SNSを一度並べ、「誰に届けるのか」「何を伝えるのか」「次にどこへ進んでもらうのか」を書き出してみてください。役割を説明できないコンテンツがあれば、そこが情報設計を見直すポイントです。

より詳細を知りたい方へ

本記事では「TECH PLAY -Branding Method-」第3章の内容を中心に解説しました。

全編をまとめた資料をダウンロードいただければ、採用ブランディングの全体像をより体系的に理解し、自社施策に活かすことができます。

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次回は「第4章:魅力的な技術イベントの作り方」を取り上げ、「誰に」「どんな魅力を」「どんな言葉で届けるのか」など、より具体的な発信設計を掘り下げていきます。