なぜ今、金融ITが外に開くのか──情報発信に踏み出した背景
ーまず、御社がエンジニア向けの情報発信に力を入れている背景を教えてください。
山口氏:弊社は、管理職のキャリアとして「スペシャリスト職」と「ラインマネージャー職」の2つのコースがあります。スペシャリスト職の要件として、「協働・共創の要請」という項目があり、社内外との接点を持つことにより価値創造が求められている背景があります。
ただ我々金融事業グループのメンバーは、お客さまのアカウントSEとして働くことが多いため、外部とつながる機会がこれまではあまりなく、情報発信をしたくてもできない状況でした。そこでまずは外部発信や外部協業の機会をつくる必要があると考え、2024年度から情報発信の場づくりに本格的に取り組み始めています。

ー現在はどのような目的・狙いで情報発信をされているのですか?
山口氏:社内外に技術力をアピールすることで「こんな技術を持った開発者が、自社のプロジェクトに参画してくれるのだ」と、クライアント企業から弊社エンジニアの顔が見えるようにしたい、というのが主な狙いです。
いかにも「採用目的感」を打ち出して情報発信するのは、今のフェーズではないと思っています。そのため現状、情報発信の1つの取り組みであるTECH PLAYのイベントは、技術ブランディングの文脈で企画・運営していますね。
ー今でこそ積極的に情報発信されている御社ですが、情報発信を始める際はなかなかハードルがあったのではないでしょうか?
山口氏:金融という事業領域だからこそ、機密情報をたくさん扱っています。最初は、当グループでエンジニア向けに社内外へ発信できるトピックスが見つかるだろうか、というのが心配でしたね。発信できる情報にさまざまな制約があるからこそ、プロジェクトマネージャー(PM)が参画したプロジェクトを詳細に語って社外の方に学びを提供するのは難しくて。
大友氏:そうですね。具体的な案件情報が出しづらいのは、発信活動のネックになっています。
技術広報をどう立ち上げたか──CTCが築く「発信基盤」
ー改めて、現在御社が行っている技術広報施策の全体像を教えてください。
伊藤氏:技術者のナレッジ共有・コミュニティ形成・採用ブランディングを視野に入れて、ブログ・イベント・外部チャネルを連動させた情報基盤を構築しています。
金融事業グループでは、「CTConnect」というオウンドメディアを運営しています。ここでは、「転機と成長」や「私がCTCで働く30の理由」といった社員のキャリアストーリー、「OUR TEAM」での職種紹介、さらに「TECH EVENT」ではTECH PLAYで開催した技術イベントで使った登壇資料などを発信しています。
現場エンジニアや営業の具体的な仕事内容・価値観に加え、金融DXに向けた技術的な取り組みもまとめており、このサイトをハブにSNSやTECH PLAYの企業ページなど外部チャネルと連動させながら広報・採用活動を行っています。
2023年ごろからは、金融事業グループで技術情報発信を目的としたテックブログを開設しました。金融ハッカソンでのチャレンジやAIエージェント開発の取り組みなど、技術者が主体となって挑戦した事例を紹介したり、「Google Agent Development Kit(ADK)」を用いたAIエージェントの実装手順など開発現場のリアルな取り組みや生の声を記事にして発信したりしています。

伊藤氏:TECH PLAYを活用し始めたのは2024年ごろで、イベント「CTC Engineer's Insight」とLT会「CTC Engineer's Voyage」の2本柱をシリーズで企画・運営しています。
「CTC Engineer's Insight」は、2025年11月に6回目を迎えた技術イベントシリーズで、金融系ITでは情報が少ない実践的な技術知見やトレンドを共有することをコンセプトとしています。
もう一方の「CTC Engineer's Voyage」は、若手エンジニアの挑戦や学びを共有するLT(Lightning Talks)シリーズとして展開しています。
ー情報発信の場にTECH PLAYを選んでいただいたのは、なぜだったのでしょうか?
大友氏:理由は大きく2つあります。1つは、TECH PLAYが優秀なエンジニアを多く抱える大きな発信の場であること。もう1つは、イベントの集客支援が受けられて、情報を届けたい層にリーチしやすいことです。
金融事業グループとして情報発信を強化しようとした際、「自社のエンジニアがどんな技術力を持っていて、どんな仕事をしているのか」が社外に十分伝わっていないことが課題でした。

そこで出合ったのがTECH PLAYでした。TECH PLAYには技術志向の強いエンジニアが多く集まっており、企業の技術発信に対して高い感度を持つコミュニティが形成されています。
また、イベントの見せ方やプログラム設計についても豊富な知見があり、私たちが伝えたい技術力を社外のエンジニアに刺さる形で発信できるよう、企画段階から伴走いただける点が一番心強かったです。
「話題がバラバラ問題」…どう束ねた?
ー今のお話にもつながりますが、現在どのようにTECH PLAYを活用しているのでしょう?
山口氏:イベント全体のテーマ設定や、外部エンジニアに刺さる企画づくりの部分でTECH PLAYの力を借りています。
当初は各イベントで発信軸が定まっておらず、「社外に話せるテーマを持つメンバーに登壇してもらう」という形で、内容が登壇者ごとにバラバラになりがちでした。その段階からTECH PLAYには複数の話題を社外のエンジニアが興味を持つひとつのテーマとして束ねられるよう相談していましたね。
大友氏:TECH PLAYとの打ち合わせを通じて、弊社がどういう方向性で発信をしていけば良いか、少しずつわかってきました。弊社の抱えている事例からどのように情報を抽出するかアドバイスをもらいながら、社外エンジニアに向けて一般的な技術的知見やマネジメントのノウハウに落とし込んで発信するよう心がけています。
こうした伴走の結果、社内にも企画ノウハウが蓄積されてきており、最近は若手エンジニアのLT会「CTC Engineer's Voyage」をはじめ、内製でイベントを企画するケースも増えてきました。
白澤氏:最近は社内でも情報発信文化というか、情報発信の意識が根付いてきていたのか、登壇を依頼したメンバーに「各自話したいことを考えてください」とお願いしたら、積極的にネタを出してきていただいたんですよね。
あとはやっぱり集客面で大いに助けられていると思いますね。「100名も集まるかな」なんて当初は半信半疑でしたが、今では毎回200名規模で参加していただけるようになりました。

「話してみたら、もっと話したくなった」──登壇が生んだ意識の変化
ー皆さんご自身もイベントに登壇されていますが、率直にいかがでしたか?
大友氏:皆さん「登壇して良かった」という反応です!私も登壇しましたが、何より楽しかったですね。業務を通じて日頃考えていたことや感じたことを整理できる機会にもなりました。イベント参加者からの声が聞けたのも嬉しかったです。
伊藤氏:私はクライアント企業のお客さまと一緒に登壇したので、お客さまとの関係性が深まった気がします。あとは、「自社サービスのPRにはならないけど、社内外に発信したいな」と思っていた情報を自由に発信できたのが嬉しかったです。
ー情報発信に力を入れ始めて以来、社内エンジニアの意識の変化は感じますか?
山口氏:情報発信に注力していることが、他社と比べて差別化ポイントになっていると認識されつつあります。先日、幹部候補生研修を行った際、自社分析をするなかで「TECH PLAYを活用するなど社外発信をしている」という発言が出ました。情報発信文化醸成を積極的に行っていることが、社内にも浸透している証拠かなと感じます。

ー新たに見えてきた情報発信における課題はありますか?
山口氏:とはいえまだまだイベント登壇者を集めることが難しいです。社内に発信文化をもっと広げて、テーマを決めれば登壇者が集まるような状態にしていきたくて。「気楽に自分の考えを喋って良いんだよ」ということをアピールしていきたいですね。
伊藤氏:確かにわりとベテランのメンバーの登壇が多かったので、私も登壇前は「自分に務まるのかな?」と不安に思っていました。もしかするとかつての私のように、登壇にハードルを感じている若手メンバーもいるかもしれませんね。
山口氏:そういった点を解消するために、若手エンジニアが登壇できる「CTC Engineer's Voyage」のようなイベントも継続していきたいです。
アウトプットが当たり前の組織へ──採用・育成・ブランドに広がるカルチャー
ー今後の技術広報・情報発信の展望を教えてください。
山口氏:それぞれの立場で情報発信の場をうまく活用したいですね。私の場合は、採用にもっと生かしていきたいです。オウンドメディアやTECH PLAYで引き続き、適切なタイミングで適切な情報発信をしたいです。メディア記事や広告、SNSも組み合わせて、転職潜在層にアプローチできるよう頑張ります。
大友氏:金融システム技術本部としては、当初は登壇者のプレゼン力向上と、ブランドイメージの強化を目的に技術ブランディングに取り組んでいました。取り組みが軌道に乗ってきた今は、特にブランド向上につながる技術ブランディングの効果を実感しており、今後も継続して注力していきたいと考えています。
白澤氏:金融システム開発本部では今月、初回のイベントを行ったばかりで、まだまだこれからです。ブランディングの側面はもちろん、メンバーが自主的にアウトプットできるような雰囲気を醸成していきたいですね。
取材・文=菱山 恵巳子
撮影=刑部 友康
※所属組織および取材内容は2025年11月時点の情報です。