「モビリティカンパニー」として、他業界を含めたエンジニアの多様な知見が必要

左:千々岩真志氏、右:早川守氏

―― ソフトウェアエンジニア人材確保に力を入れる背景について、詳しく教えてください。

千々岩:昨今、自動車産業は100年に1度の大変革期を迎えていると言われています。昨今の技術革新により、クルマの概念そのものが変わろうとしているからです。今後は、人々の暮らしを支える全てのモノ、サービスが情報でつながり、移動を軸にクルマを含めた町全体、社会全体という大きな視野で考えることが必要になります。

自動車産業という、確立されたビジネスモデルは、「CASE」とよばれる技術革新により変わりつつあります。クルマの概念が変われば、私たちのビジネスモデルも変えていかなければなりません。例えば「電動化」を進めるためには、環境技術が普及しなければ地球環境改善に役立つことはできません。

そう考えたときに、これまでとは違う発想が必要になり、単独開発にはこだわらず、より幅広く、よりオープンに、より良い社会への貢献を追求することが必要になります。つまり、強みを持ち寄り、ともに競争力を高め合いながら協調できる「仲間」が必要です。これまで以上に多様な知見を取り入れるべく、他業界を含めたエンジニアのキャリア採用に力を入れ始めました。

「クルマ×ソフトウェア」の認知度を広めるべく、採用ブランディングに注力

―― ソフトウェアエンジニアの採用をする上で、御社が抱えていた課題について教えてください。

千々岩:クルマにとってソフトウェアの重要性が高くなってきているにも関わらず、「クルマ×ソフトウェア」の認知度が十分でないという点です。

弊社では様々なソフトウェア開発を行っており、MaaS車両とそのサービス開発や情報セキュリティなど、ソフトが担う領域は多岐に渡っています。しかし、弊社から自動車産業におけるソフトウェア開発の魅力を伝えきれていないと感じていました。

実は、私自身もIT・通信業界から転職をしてきた身ですが、転職活動を行うまではトヨタでソフトウェア人材が活躍するキャリアを具体的にイメージできていませんでした。

トヨタ自動車 ソフトウェアエンジニア採用の取り組みについて語る千々岩氏

弊社はもともと新卒採用の企業文化が強かったのですが、自動車産業の変革が進み、多様な人材を採用することがより重視されるポイントとなりました。

そのような背景から、2019年頃からキャリア採用や第二新卒などの採用改革に取り組み、今のトヨタに足りない専門性、とりわけソフトウェアエンジニア(インフラエンジニア、UIUXエンジニア、Webエンジニア、組み込みエンジニア)やAI/データサイエンティストなどのIT/ICT関連分野を中心として、積極的に採用とその周辺体制を整えてきました。

ソフトウェア領域に力を入れていることを認知いただくため、特に、採用ブランディングには力を入れています。

技術力、個のキャリアを焦点に採用ブランディングを意識 TECH PLAYで「トヨタ×ソフトウェア」の認知向上を実感

―― 現在、採用ブランディングとして取り組んでいることを、具体的に教えてください。

千々岩:マス広告・ターゲティング広告を使い分けながら情報発信をしています。弊社のオウンドメディアである「トヨタイムズ」では会社の戦略や方針等を発信し、採用側では、技術や、個のキャリアに焦点をあてるように工夫していますね。

トヨタが運営するオウンドメディア トヨタイムズ

千々岩:ソフトウェアの人材採用では、広告や情報発信に加えて、2020年から技術者のプラットフォーム「TECH PLAY」内でイベントも実施しています。

イベントでは採用色を全面に打ち出すのではなく、純粋にトヨタが本気でソフトウェア開発に取り組んでいることを知っていただくことで、トヨタに興味を持ってもらい、ファンになってもらうことを目標にしています

もちろん、イベントに参加してもらって、そこから求人への応募につながればそれに越したことはないですが、一人一人が転職を考えるタイミングは異なるので、イベントを開催した時期に転職を視野に入れている人は少数だと思います。より重要なのは、長期的に候補者の方と接点を持つことだと思っています。

TECH PLAY内、トヨタのページ

―― 数あるサービスの中からTECH PLAYを導入いただいた理由について教えてください。

千々岩:TECH PLAYは、国内最大規模のエンジニア向けのイベントプラットフォームで、技術に関心の高いエンジニアが集まっているという印象だったので選定に至りました。

採用ホームページからの発信だとトヨタに関心がある方にしかメッセージを届けられないため、ソフトウェアエンジニアがよく利用されるプラットフォームを使うことで、トヨタに興味関心がない方にもソフトウェア開発への取り組みを伝えたいと思いました。

―― 実際にご利用されての評価をお聞かせください。

千々岩:これまで10回以上のイベントを実施し、大変ありがたいことに累計7,000名を超える方にお申し込みをいただきました。

参加いただいた方のアンケートを見ると「トヨタがこんなことをやっているなんて知らなかった」「トヨタのイメージが変わった」などのお言葉もあり、狙い通り認知の向上につながっていると感じています。結果的にイベントをきっかけとして採用選考に応募いただいた方は100名を超え、採用実績にもつながっています

イベント中はたくさんの鋭いご質問もいただき、時間の関係で全てに回答できていないこともあるので、今後はイベントに参加いただいた方限定のミートアップイベントや会社見学会等も実施したいと考えています。

また、技術を盛り上げるという点で、他社様とのコラボレーションもできたらと思います。

社員の積極的な協力が、採用ブランディング成功の秘訣

―― 2019年から採用変革に取り組み始めて3年経過しましたが、実際の効果はいかがでしたか?

千々岩:少しずつキャリア採用比率と、他業界からの採用比率は増えていますね。広報施策においても着実に目を向けて下さる方が増えていることを感じています。

早川:特に直近のコネクティッド領域におけるソフトウェアエンジニアのキャリア採用ですと、7〜8割が自動車業界外からの転職者です。

トヨタ自動車 採用ブランディング成功の秘訣を語る早川氏と千々岩氏

―― そのように採用ブランディングを成功させる秘訣は、どんな点にあるのでしょうか?

千々岩:現場の社員に「自分ごと」として採用に取り組んでもらえるような関係性を作ることが大きいかと思います。特にソフトウェアエンジニア採用ですと、現場社員と人事で「どんな人材が必要か」というコミュニケーションを取りながら戦略を決めています。

早川:自分のキャリアや技術を発信したいと考えている現場のエンジニア社員は多くいます。その機会を人事側から提供できているのは成功のカギではないかと感じます。最近では、現場側から「TECH PLAYをやりましょう」という声も上がってきています。

千々岩:一方、採用ブランディングの効果もありキャリア採用の比率があがったことで新しい課題も出てきています。入社後もトヨタで活き活きと活躍し、成長してもらうために、本人のやりたいことと仕事とのマッチングを高めるという必要がある点です。

そのために最近では、入社前からオンボーディングをしっかり行うことにも力を入れています。

早川:具体的には、入社者一人ひとりにメンターをアサインして、業務上のサポートや、ちょっとした困りごとが相談しやすいような体制を取っています。また、コロナ禍以降、リモートベースで働き始めたので、Slackで「お困りごとチャンネル」を作って社員同士のコミュニケーションを促したり、入社後定期的に人事担当と面談を設けたりと、キャリア入社者が活き活きと働ける風土づくりを進めています。

―― 最後に、今後の採用ブランディングの戦略についても教えてください。

千々岩:今後もマス広告、ターゲット広告を使い分けながら、モビリティカンパニーへの変革にむけた当社の変化や挑戦について、現場のエンジニアの声をリアルにお届けし続けます。私たちの取り組みに共感していただき、ファンになってもらえるような活動を心掛けて行きたいと思います。